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Bangはなぜ破産したのか?訴訟、負債、そしてモンスターエナジーによる買収

投稿日:2025年3月 6日|最終更新日:2025年3月 7日

Bangはなぜ破産したのか?訴訟、負債、そしてモンスターエナジーによる買収
アメリカの高カフェイン配合エナジードリンクの草分け的存在でアメリカのエナジードリンク市場を大きく変えたBangエナジードリンクは、2023年モンスターエナジーに買収され現在はブランドがかなり縮小してしまった印象です。

そんなBangの凋落から現在までを詳しくまとめて解説します。

Bang Energyの躍進 – エナジードリンク市場の破壊者

Bangはなぜ破産したのか?訴訟、負債、そしてモンスターエナジーによる買収

Bangは2015年くらいまではアメリカでもトップクラスのカフェイン量(375mg)を配合する最強のエナジードリンクブランドとしてひっそりと販売されていました。

元々Bangは知る人ぞ知る、というダークサイドでハードコアなエナジードリンクブランドでした。

マイナーなブランドからメジャーブランドへ、リブランドを成功させた

マイナーなブランドから脱却すべくデザインを一新し配合成分なども見直して、カフェインは300mgに変更、「スーパークレアチン」を配合したフィットネス系のエナジードリンクへとリブランドしていきました。

Bangはなぜ破産したのか?訴訟、負債、そしてモンスターエナジーによる買収

実際にリブランドによってBangの取扱店舗はコンビニやスーパーなどあらゆる店舗に広がっていきました。

2018年頃からモンスターエナジーはBangを脅威と認識していた

当時Bangがどれほど驚異的な存在だったかを知るには、モンスターエナジーがBangに類似した新しいエナジードリンクブランド「REIGN」を発売したことからもわかると思います。

Bangはなぜ破産したのか?訴訟、負債、そしてモンスターエナジーによる買収

REIGNは見た目があからさまにBangシリーズに寄せられ、カフェイン300mgなど高カフェイン配合のフィットネス系成分で構成されています。

Z世代の若者向けにポップなブランドへ変貌していくBang

REIGNが発売されてもBangの躍進は止まりません。逆にREIGNを置き去るようにさらにシェア拡大を成功させていきます。

Bangはなぜ破産したのか?訴訟、負債、そしてモンスターエナジーによる買収

これまでの黒ベースのブランドカラーから、白ベースでカラフルなブランドカラーへ大転換をしたのは衝撃的でした。

これまでよりもさらにポップでアクティブな若者向けにSNSの露出を増やしていくことで爆発的な人気を得るようになります。ハードコアな印象から大衆向けの明るいブランドイメージへ変更したいということですね。

これが大成功を収め、Bangはアメリカのエナジードリンクシェア3位にまで躍進します。

2020年、新しい新興エナジードリンクブランドの乱立が際立ち始める

Bangシリーズに触発されるように、同じくゼロシュガーに高カフェインを配合したフィットネスサプリメントブランド発のエナジードリンクや若者向けのSNSマーケティングを駆使した新しいエナジードリンクブランドが続々と登場しました。

2022年には多くの新興ブランドが立ち上がり、アメリカのエナジードリンクのほとんどがゼロカロリーで高カフェイン配合の商品で埋め尽くされるほどになっていました。

このようにBangはアメリカのエナジードリンク市場においてゲームチェンジャー的な存在であったことは間違いありません。

Bang Energyを揺るがせた訴訟

Bangはなぜ破産したのか?訴訟、負債、そしてモンスターエナジーによる買収
Bangは順風満帆というわけではなく、モンスターエナジーとの裁判が続くことで徐々に衰退していきます。

Monster Energy vs. Bang Energy – 2億9300万ドルの訴訟

モンスターエナジーはBangに含まれている「スーパークレアチン」は特別な成分ではなく特別な効果はない虚偽広告であると訴えました。

Bang Energyは、Super Creatineを「体内でクレアチンに変換される特別な成分」と宣伝していましたが、実際にはクレアチンとしての効果が証明されていない化合物であることが判明しました。この虚偽広告が問題視され、2022年に裁判でBang Energyは敗訴。裁判所はBang Energyに対し、2億9300万ドル(約430億円)の賠償金支払いを命じました。

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PepsiCoとの流通契約トラブル – 破綻したパートナーシップ

2020年、Bang Energyは自社製品の流通拡大を目的に、PepsiCoと独占販売契約を締結しました。しかし、この契約はわずか1年半で破綻し、B早期解除したことによる賠償金1億1500万ドル(172億4137万円)の支払義務もあると伝えられています。

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「Orange bang」から「bang」の商標侵害

1971年に設立された飲料メーカーの「Orange bang」は1980年代から「bang」を商標登録し長く商品名として使用してきました。Orange Bangは、VPXがこの名称を無断で使用しているとして、商標権侵害の訴えを起こしました。

裁判所はBang Energyに対し1億7500万ドル(約255億円)の損害賠償を命じ、さらにBang Energyは今後「Bang」ブランドを使用する際にOrange Bangに売上の5%のロイヤリティを支払うことも命じられました。

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財務危機 – 訴訟が破産を引き起こした理由

上述のような訴訟が連続で発生し、アメリカではトップ3となるまでに急成長したBangエナジードリンクは資金調達にも失敗し破産にまで突き進んでいきます。

破産申請後、Bang Energyは経営再建を試みましたが負債の規模が大きすぎたため、自力での回復は困難な状況でした。そのため企業の資産売却が進められ、ブランドの存続をかけた競売が開始されました。

Bang Energyの崩壊、破産、そしてモンスターエナジーによるBangの買収

2023年、モンスターエナジーはBang Energyを3億6200万ドル(約530億円)で買収しました。

大規模な訴訟を起こして敵対していたモンスターエナジーがBangを買収・・・。アメリカのエナジードリンクシェアの3位にまで急成長したBangが想像以上に脅威になり始めていたということでしょう。

モンスターエナジー傘下に入り、Bangのブランド力は劇的に低下

モンスターエナジーに買収されたBangシリーズはこれまでのような店頭での存在感はなくなりました。モンスターエナジー傘下のブランドとして新たに発売された2024年は「その他エナジードリンクブランド(ほとんど店頭には置いていない)」にまで成り下がってしまいました。

Bangのプロモーションの一部に出てきた名物CEOである「Jack Owoc」の存在や彼の率いたプロモーションやブランドイメージをモンスターエナジー傘下になっても同等に行えるかどうかは微妙だと思っていたため、「その他エナジードリンク」になってしまうことは無理もないかなと思います。

コカ・コーラからモンスターエナジー傘下に入った名門ブランドも同様の道を辿ってきた

過去に独自の展開をしていた歴史あるエナジードリンクブランド(burnMotherFull ThrottleRelentlessLive+など)は、コカ・コーラとモンスターエナジーの提携により、モンスターエナジー傘下に入った結果、何れもブランド力が低下し、これらも「その他エナジードリンク」として魅力は低下しています。

アメリカのエナジードリンク市場に根本から変化を起こしたBangの栄枯盛衰

Bangはアメリカのエナジードリンクシーンを変えたゲームチェンジャーでありながらこのような結果になってしまったのは非常に残念です。Bangの没落を見るとブランド戦略などの法的リスクをしっかりと管理する重要性を強く感じます。

特に今回のBangの訴訟の多くが法的リスクを軽視した結果と言わざるを得ない部分が多い。そのせいで独自のプロモーションとブランドイメージが完全に消え去ってしまった現状は非常に残念に思います。

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著者について著者:エナジー・ドリン君

2001年頃、在米時にダンスシーンを通じてエナジードリンクに出会い感動。 帰国後日本ではネタ飲料扱いだったエナジードリンクの本当の魅力を伝えるために2013年総合サイトを開設。 エナジードリンクマニアとして改めてエナジードリンクを真剣に飲み始め、各国で狩りをして飲み集めたコレクションは世界7,000種類以上。 メディア取材を受ける評論家や専門家としても活動中。